東大駒場キャンパスの梅の木に、ミダレカクモンハマキの幼虫を発見した。この時期、梅や桜の葉が虫食いになっているのを例年よく見かけるが、その割に毛虫や芋虫を発見することは少ない。この幼虫も、よくよく梅の木を観察した末、不自然に重なりあった二枚の葉っぱの間に糸を張って隠れていたところをやっと見つけたもの。捕食者である鳥類の目をくらますための、巧みな生存戦略と言えるだろう。成虫を見るのが楽しみである。
2016年4月30日土曜日
2016年4月29日金曜日
若冲の蛾
だいぶん気温も暖かくなり、夜にはちらほら電灯に集まる蛾を見かけるようになった。遠からずフレッシュな蛾の写真をお届けできると思うので、楽しみに待っていて欲しい。
さて、今日両親が上野の若冲展へ行ったということで、図録を買ってきたのでめくっていた所、「池辺群虫図」なる画が載っていた。「群虫図」は(かの有名な!)『動植綵絵』の23枚目で、その名の通り池に集まる昆虫や両生類・爬虫類を若冲一流の繊細なタッチで、画面いっぱいに描いている。一見すると画面中央近くに配されたアゲハチョウ・モンシロチョウや左を向いたカエルの群れが目につくが、しっかりと探してみると毛虫や尺取虫に加え、蛾の成虫(画面左上で蜘蛛の巣にかかっているキシタバ)を見つけることができる。他にもハサミムシ、アリ、ゴキブリ、ケラ、ヤスデなど、地味な虫まで丁寧に描かれているのは、細かな観察眼のなせるわざだろう。
ちなみに、『動植綵絵』の17枚目では蝶の群れが描かれており、残念ながらこちらには蛾は登場していない。江戸時代の日本人にとって蛾がどのような存在であったのか、寡聞にして知らないが、「蛾=害虫」という図式は、「Moth=イガ(服の害虫)」という英単語を「蛾」と訳すことで明治以降に輸入されたという説もあるようだ。確かに、美人を意味する「蛾眉」という言葉などからは、蛾が必ずしもネガティブなイメージを伴った存在ではなかったことが推察される(もちろん、画題として蝶のほうが派手であることは否定しがたいが)。この辺りの文化史的側面もおいおい調べてみたい。
さて、今日両親が上野の若冲展へ行ったということで、図録を買ってきたのでめくっていた所、「池辺群虫図」なる画が載っていた。「群虫図」は(かの有名な!)『動植綵絵』の23枚目で、その名の通り池に集まる昆虫や両生類・爬虫類を若冲一流の繊細なタッチで、画面いっぱいに描いている。一見すると画面中央近くに配されたアゲハチョウ・モンシロチョウや左を向いたカエルの群れが目につくが、しっかりと探してみると毛虫や尺取虫に加え、蛾の成虫(画面左上で蜘蛛の巣にかかっているキシタバ)を見つけることができる。他にもハサミムシ、アリ、ゴキブリ、ケラ、ヤスデなど、地味な虫まで丁寧に描かれているのは、細かな観察眼のなせるわざだろう。
ちなみに、『動植綵絵』の17枚目では蝶の群れが描かれており、残念ながらこちらには蛾は登場していない。江戸時代の日本人にとって蛾がどのような存在であったのか、寡聞にして知らないが、「蛾=害虫」という図式は、「Moth=イガ(服の害虫)」という英単語を「蛾」と訳すことで明治以降に輸入されたという説もあるようだ。確かに、美人を意味する「蛾眉」という言葉などからは、蛾が必ずしもネガティブなイメージを伴った存在ではなかったことが推察される(もちろん、画題として蝶のほうが派手であることは否定しがたいが)。この辺りの文化史的側面もおいおい調べてみたい。
2016年4月11日月曜日
不在を感じること
三寒四温の日々が続いている。
蛾のブログを立ち上げて、蛾に関する話題を常に意識するようになってはじめて、四月は蛾があまりいないことに気づいた。言われてみれば、桜の害虫でお馴染みのチャドクガも、桜が散って葉が出なければ発生のしようもない。何かがないことに気づくのは、意外とむつかしい事である。
2016年4月8日金曜日
蛾、類人猿、爬虫類
蛾と蝶の区別ということがよく問題になる。
結論から言うと、棍棒状の触角を持っているものが蝶であとは蛾、ということらしい。
しかし、今日の分類学では形態よりも遺伝子から推測される系統関係が重視される。系統による分類で重視されるのが「単系統」という概念である。「単系統」な分類とは、簡単に言えば「系統樹から一回で折りとれる枝」の様なものである。たとえば、「類人猿」は単系統ではない。オランウータン、テナガザル、ゴリラ、チンパンジーの共通祖先の所で「枝」を折りとった後に、チンパンジーから枝分かれしたヒトをもう一度折りとらないといけないからである。従って「類人猿」のようなカテゴリは、生物学的に意味のあるものとは見なされない。他の例を挙げると、「爬虫類」も単系統ではない(カメ、ワニ、トカゲが入るように「枝」を折りとると、恐竜を祖先にもつ鳥類も含まれてしまう)。
同様に、「蛾」も(じつは)単系統ではない。系統的に言えば、蛾は「鱗翅目であって蝶でないもの」と定義される。最近の分類学的には、アゲハチョウ、セセリチョウ、スズメガ、シャクガあたりが同様のスケールの分類群に相当するとされているようである。
同様に、「蛾」も(じつは)単系統ではない。系統的に言えば、蛾は「鱗翅目であって蝶でないもの」と定義される。最近の分類学的には、アゲハチョウ、セセリチョウ、スズメガ、シャクガあたりが同様のスケールの分類群に相当するとされているようである。
したがって、「蝶と蛾の見分けかた」への系統的に自然な答えは、「蝶は蛾である」ということになるのかもしれない。