2016年4月29日金曜日

若冲の蛾

だいぶん気温も暖かくなり、夜にはちらほら電灯に集まる蛾を見かけるようになった。遠からずフレッシュな蛾の写真をお届けできると思うので、楽しみに待っていて欲しい。

さて、今日両親が上野の若冲展へ行ったということで、図録を買ってきたのでめくっていた所、「池辺群虫図」なる画が載っていた。「群虫図」は(かの有名な!)『動植綵絵』の23枚目で、その名の通り池に集まる昆虫や両生類・爬虫類を若冲一流の繊細なタッチで、画面いっぱいに描いている。一見すると画面中央近くに配されたアゲハチョウ・モンシロチョウや左を向いたカエルの群れが目につくが、しっかりと探してみると毛虫や尺取虫に加え、蛾の成虫(画面左上で蜘蛛の巣にかかっているキシタバ)を見つけることができる。他にもハサミムシ、アリ、ゴキブリ、ケラ、ヤスデなど、地味な虫まで丁寧に描かれているのは、細かな観察眼のなせるわざだろう。

ちなみに、『動植綵絵』の17枚目では蝶の群れが描かれており、残念ながらこちらには蛾は登場していない。江戸時代の日本人にとって蛾がどのような存在であったのか、寡聞にして知らないが、「蛾=害虫」という図式は、「Moth=イガ(服の害虫)」という英単語を「蛾」と訳すことで明治以降に輸入されたという説もあるようだ。確かに、美人を意味する「蛾眉」という言葉などからは、蛾が必ずしもネガティブなイメージを伴った存在ではなかったことが推察される(もちろん、画題として蝶のほうが派手であることは否定しがたいが)。この辺りの文化史的側面もおいおい調べてみたい。

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